ステロイドをやめたいけれど、悪化が怖い――リバウンドへの不安にどう向き合えばいいか?
ステロイドをやめると、症状が一気に出る人もいれば、ゆっくりと出てくる人もいます。
この違いは、もともとのアトピー性皮膚炎の重症度や、長期間にわたるステロイドの使用歴、体の回復力などにより個人差があります。
当院では、基本的にステロイドなどの薬の使用は推奨していません。
なぜなら、薬によるアプローチと鍼灸によるアプローチでは、目指している方向がまったく異なるからです。
この違いを分かりやすくお伝えするために、以下の有名な壁画修復の比喩をご覧ください。

【左】:元々の美しい壁画(=本来の健康な状態)
【中央】:時間とともに劣化が進んだ状態(=本来のアトピー性皮膚炎の状態)
【右】:劣化を“修復”しようとして、全く別の姿に変わってしまった状態(=見た目だけを整えようとした治療の結果)
鍼灸治療がめざしているのは、【左】――つまり、体本来の働きを取り戻し、根本的に回復していく方向です。
ステロイドをやめたばかりの方は、【右】から【中央】を通って【左】へ。
すでに薬を使っていない方は、【中央】から【左】へ。
出発点は人それぞれですが、私たちが大切にしているのは「どこに向かっているか」という方向性です。
一方で、ステロイドは【中央】から【右】に向かう力を持っています。
両者は真逆の方向を向いているため、併用しようとすると治療の力がぶつかり合い、中途半端な結果になってしまうのです。
ただし、当院が「すぐにやめなさい」と一方的に押しつけることはありません。
治療を始める前に、こうした治療の考え方をご説明したうえで、ステロイドを続けるかどうかは患者さん自身に判断していただきます。
そのうえで、本気でステロイドをやめたいと考えている方に対しては、「思いきってやめる」ことをおすすめしています。
というのも、だらだらと薬を使い続けていると、なかなかやめるきっかけがつかめず、
「いつかやめたい」が「やめられないまま」に変わってしまうからです。
ステロイドを使うと、一見症状は落ち着いたように見えるかもしれません。
しかし、それは【右】のように、「回復」ではなく“違うものに変えてしまった”結果である可能性もあります。
たとえば、色素沈着やまだらな湿疹、痒疹(かゆみの強い盛り上がった皮膚)、一部にだけ集中して炎症が強く出ているような状態は、本来のアトピー性皮膚炎とは異なる、薬の影響を受けた「右」の状態になっている可能性があります。
本当に大切なのは、【中央】から【左】へと向かっていくこと――
つまり、体本来の働きを取り戻すプロセスを支えていくことです。
当院では「今どこにいて、どこへ向かっているのか」を大切に見極め、
確実に“本来の回復”へ向かうための治療を行っています。