完治という曖昧な言葉をゴールにするのではなく、具体的なゴールを見据えましょう
A. 適切な治療を行えば、皮膚はとても綺麗になり、症状のない状態が長く続くこともあります。
ただし、「完治」という言葉を使うには、改めてこの言葉に真剣に向き合う必要があります。
「完治」という言葉はとても魅力的に聞こえますが、実はとても曖昧です。
たとえば風邪が治ったあとにまた風邪をひくことがあるように、
「症状が治まった=一生出ない」とは限りません。
また、アトピー性皮膚炎のように遺伝的素因が関わる病気では、
「治ったかどうか」の基準はさらに複雑です。
実際、当院では皮膚の状態が非常に安定し、長期にわたって症状が出ていない患者さんも多くいらっしゃいます。
見た目だけの皮膚状態から判断すれば、完治という言葉を使いたくなる気持ちも分かります。
しかし、これは本当に「完治」と言っても良いのでしょうか?
遺伝的素因があったとしても、長期間安定した皮膚状態を維持することは可能だと思います。
しかし、だからと言って遺伝的素因がなくなるわけではないと思います。
遺伝的素因があったからと言って必ず発現するわけではないので、
そこを目指すのが正解なのだと思います。
実際の臨床において、皮膚の状態が良くなっていたとしても、
患者さんの身体は治療を要求することがあります。
これは遺伝的素因がある以上、治療を通したある程度のコントロールが必要なのかも知れません。
これは東洋医学でいう「未病」(症状はないが、体のバランスが崩れ始めている状態)の状態なのだと思います。
つまり、所謂 「完治」 をゴールと考えるのではなく、
遺伝的素因があったとしても、症状が出ず、日常生活に支障がなく、体が快適に保たれている状態をゴールとすること。
それこそが、現実的で、そして本質的なアトピー治療の目標ではないでしょうか。
私はそう考えています。